滋賀県大津市に位置する瀬田漕艇場。広大な琵琶湖から流れ出る穏やかな水面は、京都大学ボート部が長年にわたり牙を研ぎ続けてきた聖地だ。ここで繰り広げられるローイング競技の練習風景は、一般的な部活動のイメージを根底から覆す。艇に取り付けられた高精度センサーが、オールにかかるトルク、推進力への変換効率、キャッチからフィニッシュに至るミリ秒単位のブレをリアルタイムで数値化していく。
「感覚だけに頼る漕ぎは再現性がない」。学生たちは練習直後、エルゴメーターのモニターやタブレット端末を囲み、各クルーの出力カーブを徹底的に突き合わせる。心拍変動データや乳酸値の測定に基づいた個別最適化メニューにより、オーバートレーニングを防ぎつつ運動生理学的な限界値を引き上げる。京都大学が培ってきた学術的知見が、そのまま勝つための武器として水上に投影されている。