ネット掲示板やSNSでは長年、「フジテレビが格闘技を見捨てた」「テレビ局の怠慢で無料視聴の機会が奪われた」といった感情的な批判が散見されます。しかし、メディア構造と法務リスクの観点から検証すると、一面的な「フジテレビ悪玉論」は事実に即していません。
誤解1:地上波撤退は単なる視聴率や予算の問題だった?
真相は、予算や視聴率の懸念ではありません。天心vs武尊の注目度は極めて高く、20%以上の高視聴率が見込めるキラーコンテンツでした。撤退の本質は、放送法および民放連のガイドラインに基づく「反社会的勢力排除に関する厳格な企業防衛」でした。万一、放送後に重大なコンプライアンス違反が立件された場合、テレビ局は放送免許やスポンサー企業からの巨額損害賠償リスクに直面します。法務・ガバナンスの観点では、放送中止は組織として避けられない防衛策でした。
誤解2:地上波がなかったことで格闘技人気が衰退した?
むしろ現実は逆の結果を生み出しました。地上波の撤退がなければ、50万人が有料でPPVを購入するという「コンテンツへの直接課金モデル」はここまで急速に定着しませんでした。無料放送に依存していたビジネスモデルから脱却したことで、選手へ巨額のファイトマネーを還元できるエコシステムが確立され、結果として格闘技界全体のプロ化とグローバル化を加速させる契機となったのです。