スズメの絶滅危惧種問題を語る上で、見落とされがちな重要な事実が2点あります。情報が混乱する原因と、真の生態学的リスクを正しく整理します。
混同されやすい近縁種「ニュウナイスズメ」の存在
日本には普段目にするスズメのほかに、「ニュウナイスズメ(Passer cinnamomeus)」という同属の野鳥が生息しています。ニュウナイスズメは頬に黒い斑点がなく、主に平地ではなく亜高山帯の森林や農耕地に局地的に生息する鳥です。
このニュウナイスズメは開発による広葉樹林の減少によって数を大きく減らしており、複数の都道府県版レッドデータブックで「絶滅危惧II類(VU)」や「準絶滅危惧(NT)」に正式指定されています。「スズメが絶滅危惧種になった」というニュースの一部は、このニュウナイスズメの情報が普通のスズメと混同された結果生じたものです。
「害鳥」から「保全対象」への認識のパラダイムシフト
かつてスズメは、実った稲穂を食べる「農業害鳥」として駆除の対象にされた歴史があります。しかし、スズメは春から初夏にかけて農作物につく膨大な害虫を捕食してくれる「益鳥」としての側面を強く持っています。
1950年代の中国で展開された「四害駆除運動(スズメを徹底的に駆除した政策)」では、スズメ激減に伴いイナゴやウンカなどの害虫が大発生し、壊滅的な大飢饉を招く一因となりました。スズメがいなくなることは、単に鳥が減るだけでなく、農生態系のバランスそのものが崩壊することを意味します。