大久保利通の暗殺に関しては、現在でもネット上で様々な陰謀論や俗説が囁かれています。歴史研究の観点からこれらの誤解を検証します。
誤解①:政府内部に暗殺を手引きした「黒幕」がいた?
大久保の死によって権力を握った伊藤博文や岩倉具視、あるいは警察制度を創設した川路利良が暗殺を容認したとする「政府内黒幕説」が一部で語られます。しかし、警察庁の記録や当時の裁判資料(大審院判決録)を照合しても、島田一郎らが独自のネットワークで資金調達と情報収集を行っていたことが明白であり、計画を察知できなかった警視庁の初動ミスはあっても、謀略の証拠は一切存在しません。
誤解②:大久保は利権を握り私腹を肥やしていた?
斬奸状にも「財政の私物化」と非難されましたが、大久保の遺品整理で明らかになったのは8,000円(現在の貨幣価値で約1億5,000万〜2億円相当)という巨額の借金でした。大久保は福島県の安積疏水事業や各地の殖産興業プロジェクトにおいて、国の予算が不足した際に自らの個人資産を担保に借金をして事業を推進していたのです。大久保個人の遺産はほとんど残っておらず、政府の要人たちがカンパを募って大久保家の借金を返済したという事実は、彼が私利私欲とは無縁の政治家であったことを如実に物語っています。