日常生活の中で突如として「自分が自分じゃない感覚」に襲われたり、自分の手足が自分のものではないように感じられたりする状態を「離人感」と呼びます。また、周囲の風景が映画のスクリーンのように平面的に見えたり、「現実感がない・ふわふわする」感覚に包まれたりする状態を「現実感消失」と定義します。
国際的な診断基準(DSM-5-TR)では、これらが持続的または反復的に生じ、日常生活に支障をきたしている状態を「離人感・現実感消失症」と位置づけています。解離性障害のカテゴリーに分類される病態ですが、記憶喪失や多重人格のように自己の同一性が失われるわけではなく、「自分が異常な感覚に陥っている」という現実検討能力(客観的な自覚)が保たれている点が大きな特徴です。
当事者の手記や臨床報告では、「自分の声を遠くから他人が喋っているように聞いている」「感情のスイッチが切れて、喜怒哀楽が湧かないロボットになったようだ」といった独特の主観的体験が一貫して語られます。