ネット上の感想や考察において頻繁に見られる誤解が、「九条間人は金のために悪人に加担する悪徳弁護士である」という短絡的な見方です。しかし、作中の描写を丹念に追うと、真鍋氏が提示しているテーマは全く異なる次元にあります。
日本国憲法第37条は、すべての刑事被告人に対して弁護人を依頼する権利を保障しています。たとえ凶悪犯であっても、適正な法手続きのもとで裁かれなければならないのが法治国家の原則です。九条はこの原則を徹底的に遂行しているだけであり、彼自身が犯罪を教唆しているわけではありません。
事実、九条は依頼人に対して一度も「嘘をつけ」とは指示しません。「記憶にないことは話すな」「余計な推測を語るな」という、法的に認められた権利の使い方をアドバイスしているに過ぎないのです。九条を「悪徳」と断じることは、現代の法制度そのものが内包する矛盾から目を背けることと同義である——これこそが本作が突きつける最大の盲点です。