発電所から家庭や工場まで電気を送る際、最も重要な課題となるのが送電ロスの低減です。電線にはわずかな電気抵抗が存在するため、電流が流れると「ジュール熱」と呼ばれる熱が発生し、電力が空気中へ逃げてしまいます。
この送電ロスを最小限に抑えるには、「電圧を極限まで高くして、電流を小さくして送る」ことが物理法則上最も有効です。電力を一定とした場合、電圧を10倍に上げれば電流は10分の1になり、発熱による電力損失は100分の1に激減します。超高圧で送電し、消費地に近づくにつれて段階的に電圧を下げる必要があります。
ここで交流が圧倒的に優位に立ったのが、変圧が極めて容易であるという理由です。交流は「トランス(変圧器)」と呼ばれるコイルと鉄心を用いたシンプルな構造の機器を通すだけで、電磁誘導の作用により容易に電圧を上げ下げできます。20世紀初頭のエジソン(直流派)とテスラ・ウェスティングハウス(交流派)による「電流戦争」において交流が勝利した最大の要因も、この変圧技術の簡便さにありました。