殺傷能力の高い凶悪な山岳妖怪を、現代のように親しみ深いキャラクターへと大胆に変貌させたのは、紛れもなく水木しげる氏の原作と東映アニメーションによる翻案の力です。水木氏は各地の民俗誌を精力的に渉猟する中で『妖怪談義』に記された子泣き爺に着目し、その特異な「石化して重くなる」という特性を、正義の味方側の「物理攻撃の切り札」としてリデザインしました。
鬼太郎ファミリーにおける子泣きじじいを語る上で欠かせないのが、子泣きじじいと砂かけ婆の関係です。妖怪アパートの大家を務める砂かけ婆と、酒好きで呑気な子泣きじじいは、常に軽口を叩き合いながらも背中を預け合う唯一無二のパートナーです。アニメ第5作(17話など)で見せた、石化した子泣きじじいを一反木綿に乗せ、ねずみ男が砲丸のようにぶん回して投擲する合体必殺技「子泣きハンマー投げ」に代表されるように、砂かけ婆をはじめとする仲間たちとの強固なコンビネーションは作品の名物となりました。酒に溺れては砂かけ婆に箒で叩かれ、叱責されながらもどこか夫婦漫才のような阿吽の呼吸を見せる二人の関係性は、原作から昭和・平成・令和の歴代シリーズへ脈々と受け継がれています。
また、個性的なキャラクターに命を吹き込んできた子泣きじじいの歴代声優陣の変遷も見逃せません。昭和の時代から日本を代表する名優たちがその滋味深い声を担当してきました。
- 第1作・第3作:永井一郎(飄々としたユーモアと戦闘時の凄みを両立させ、キャラクターの基本形を確立)
- 第2作:矢田耕司(渋みのある演技で妖怪としての妖しさを巧みに表現)
- 第4作・『墓場鬼太郎』:塩屋浩三(コミカルさと老獪さを絶妙に織り交ぜた演技)
- 第5作:龍田直樹(ハイテンションなギャグ描写からシリアスな戦闘まで幅広く好演)
- 第6作:島田敏(情に厚く、酒にだらしないが仲間を命懸けで守る人情派の長老として熱演)
名優たちの熱演によって、かつて人を窒息死させていた恐るべき山の怪異は、誰もが安心感を覚える「お茶の間のおじいちゃん」としての地位を確立したのです。