血抜きだけでも十分な鮮度を保てますが、2日以上寝かせて旨味を引き出す「熟成刺身」を目指すなら、神経締めは避けて通れません。脊髄の中枢神経を破壊することで、死後硬直の開始を劇的に遅らせ、ATPの分解を極限まで引き延ばすことが可能になります。
しかし、ヒラメの神経締めはマダイやスズキに比べて難易度が高いとされています。平たい体躯ゆえに脊柱管(神経が通る穴)が細く、進入角度を誤りやすいためです。現場で失敗しないための急所を整理しました。
尾びれ側からアプローチする確実なやり方
初心者に最もおすすめなのが、切断した尾びれの断面からワイヤーを通す手法です。頭側からの侵入は頭骨の硬さに阻まれて脊柱管を見失いがちですが、尾びれの断面であれば、中骨(背骨)のすぐ背側(上側)にある小さな白い神経孔を目視で容易に確認できます。
- 尾びれの付け根の断面にある、背骨の直上にある直径1mmほどの白い管(脊髄)を探す。
- そこにおすすめワイヤー(線径1.0mmの形状記憶チタンワイヤー)の先端を真っ直ぐ差し込む。
- 背骨に沿わせるように、頭部へ向かってゆっくりとワイヤーを押し進める。
- ワイヤーが脊髄に入ると、体色がパッと白く色抜けし、背ビレと尻ビレが激しく波打つように痙攣する。
- 頭部までワイヤーが到達したら、2〜3回前後にスライドさせて神経を完全に破砕する。
ワイヤーを抜いた後、全身の筋肉がフニャリと柔らかく弛緩していれば、神経締めは完璧に成功しています。この処置を行うことで、身の硬直が数時間遅延し、透明感と弾力が驚くほど長持ちします。