看板メニューであるハンバーグやビーフシチューの命とも言えるのが、創業以来つぎ足されてきたデミグラスソースだ。牛骨と香味野菜をじっくりと焼き上げ、何日もかけてアクを取りながら煮込む。気の遠くなるような作業だ。近年の人手不足や原材料高騰の波を受け、多くの店が業務用ソースへの切り替えを余儀なくされる中、ここではその妥協は一切許されない。
「効率を求めたら、うちの味ではなくなる」。店主の言葉には、職人としての強い覚悟が滲む。スプーンですくったときの艶、口の中に広がるほのかな苦味と甘味の絶妙なバランス。これらはすべて、時間を味方につけた手仕事の結晶だ。一口ごとに広がる深いコクは、訪れる人々の記憶に強く刻み込まれる。