西麻布の惨劇から10数年。過酷な試練を経た海老蔵氏は、人間的にも役者としても大きな変貌を遂げました。
2011年7月に舞台復帰を果たして以降、伝統的な歌舞伎の舞台に全身全霊で打ち込む一方、自主公演『ABKAI』の立ち上げや海外公演の成功など、精力的な挑戦を継続。2017年には最愛の妻・小林麻央さんとの死別という耐え難い悲痛を経験しながらも、長女・市川ぼたん氏、長男・市川新之助氏を育て上げ、父として、そして一門の長として揺るぎない覚悟を示しました。
そして2026年11月、コロナ禍による延期を乗り越え、歌舞伎界最高峰の大名跡である十三代目市川團十郎白猿を襲名。襲名披露興行は大盛況を収めました。
市川團十郎としての現在の活動は、歌舞伎座での大舞台にとどまりません。日本全国を巡る巡業公演の推進、次世代への伝統文化の継承、デジタル技術を融合させた新たな舞台表現の創出など、歌舞伎の裾野を広げるためのフロントランナーとして走り続けています。かつての奔放な青年は、痛切な代償を支払った経験を芸の深みへと昇華させ、いまや日本を代表する文化の体現者としての風格を湛えています。