江口寿史の原点は、1977年『週刊少年ジャンプ』における『恐るべき子供たち』でのヤングジャンプ賞入選、そして同年連載を開始した『すすめ!!パイレーツ』にあります。当時の少年漫画界におけるギャグといえば、泥臭いスラップスティックが主流でした。そこにアメリカン・コミックスやロックミュージック、最新のストリートファッションの香りを持ち込み、スマートでスタイリッシュな笑いを確立した功績は計り知れません。
その革新性が頂点に達したのが、1981年連載開始の代表作『ストップ!! ひばりくん!』です。主人公の大空ひばりは、可憐な美少女でありながら実は少年という前代未聞のキャラクター造形でした。当時の少年読者に強烈な視覚的・心理的インパクトを与えただけでなく、現代のジェンダーレスカルチャーを40年以上先取りしていた先見性は、今日の批評空間でも高く評価されています。
作中に登場する衣装は、当時のオリーブ少女や裏原宿前夜のトレンドをリアルタイムで反映しており、単なる漫画の枠を超えて「最先端のファッションカタログ」としても機能していました。江口寿史は漫画のコマの中に、日本のグラフィックデザイン史に残る洗練を持ち込んだのです。