同館の大きな転換点となったのが、開館20周年を記念して2016年に拡張オープンした「トットちゃん広場」の存在です。当館の館長を務める黒柳徹子氏の自伝的名作『窓ぎわのトットちゃん』に登場する理想の学び舎「トモエ学園」の風景が、約53,500㎡に及ぶ安曇野ちひろ公園の一角に見事に再現されています。
広場の中心に鎮座するのは、長野電鉄などから譲渡され、入念な修復を施された2両の実物車両(モハとデハ)です。一歩足を踏み入れれば、木製の学習机や黒板が並ぶ「電車の教室」と、壁一面に児童書が並ぶ「電車の図書室」が広がり、トットちゃんが過ごした昭和初期の自由教育の空気を五感で追体験できます。黒柳館長が「子どもたちが自分らしく、のびのびと過ごせる居場所を」と語った祈りが、この静かな田園の風景の中にしっかりと息づいています。
本館内の見どころも見逃せません。ちひろの代表作や初期の素描、みずみずしい水彩のにじみ技法を間近に鑑賞できる「展示室1」をはじめ、世界の絵本画家のコレクションを紹介する展示室、靴を脱いでくつろげる「絵本の部屋」など、大人から乳幼児までストレスなくアートに没入できる動線設計が徹底されています。