練習を重ねても文字が平面的に見えたり、違和感が生じたりする場合、その根本的な原因は画力不足ではありません。認知心理学における「上方光源バイアス(人間は光が上方から降り注いでいると無意識に認識する心理特性)」に反した線の引き方をしている点にあります。
最も頻発するミスは、1つの文字の中で影の落ちる方向がバラバラになってしまう現象です。たとえば、縦線には「右側」に影をつけているのに、横線には「上側」に影をつけてしまうといった不整合が挙げられます。人間の脳は、光の方向が一貫していない物体を見ると強い違和感を覚え、立体ではなく「インクの滲み」や「汚れ」として処理してしまいます。影文字が不自然になる理由は、まさにこの光源設定の破綻に集約されます。
さらに、文字の隙間をすべて黒や濃色で塗りつぶしてしまうケースも立体感を損なう大きな要因です。影とは本来、光を遮られた面にのみ生じるグラデーションや面です。文字の線の太さに対して影が太すぎたり、角の処理が直角ではなく丸まっていたりすると、文字本来の輪郭が破壊され、遠目から見たときの可読性が著しく低下します。