立浪親方の現在と裁判の真相|豊昇龍を育てた名伯楽の半生を追う

立浪親方の現在と裁判の真相|豊昇龍を育てた名伯楽の半生を追う

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名門継承という華々しい船出からわずか数年後、相撲界を揺るがす最大の激震が走ります。先代立浪親方(義父・安念山)との間で部屋の運営方針や金銭をめぐる深刻な対立が表面化し、先代側が旭豊に対して年寄名跡「立浪」の返還や、部屋の土地・建物の明け渡し、さらには名跡対価として約1億7500万円の支払いを求めて提訴するという、前代未聞の法廷闘争へと発展したのです。

裁判の最大の争点となったのは、「年寄名跡は財産権として売買・返還請求の対象になるのか」という点でした。先代側は「名跡の継承には一定の対価支払いの合意があった」「養子縁組の実質が失われた以上、名跡は返還されるべきである」と主張。これに対し、旭豊側は「日本相撲協会の規定上、年寄名跡は公的な資格であり個人の私有財産ではない」「継承は無償の譲渡契約に基づく正当なものであり、金銭の支払義務はない」と徹底抗戦しました。

一審、二審を経て最高裁判所まで持ち込まれたこの法廷闘争は、最終的に旭豊側の全面勝訴で決着を見ました。司法は「年寄名跡の取得に関して金銭の支払義務を認める証拠はなく、名跡の返還請求も認められない」との判断を下し、年寄名跡の私有財産化に明確な歯止めをかける歴史的な判例となりました。しかし、この勝利の代償は決して小さなものではありませんでした。義父との泥沼劇の過程で先代の長女とは離婚に至り、代々受け継がれてきた部屋の敷地からも立ち退きを余儀なくされるなど、旭豊は文字通り孤立無援の境地に立たされたのです。

私生活での大きな挫折と精神的プレッシャーを抱えながらも、立浪親方は決して相撲界から逃げ出しませんでした。その後、親方を誠心誠意支え続けた現在の妻と再婚し、新たな家庭を築くことで生活の安定を取り戻します。公私ともに再出発を果たした立浪親方は、旧来のしがらみをすべて断ち切り、まったく新しい形で立浪部屋を立ち上げる覚悟を固めたのです。

橋本 菜々子
著者

橋本 菜々子

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。