旅行者が最も頭を悩ませるのが、「どこをどれだけ歩くべきか」という移動の組み立てです。奥入瀬渓流の玄関口である「焼山(やけやま)」から十和田湖畔の「子ノ口」までは全長約14kmあり、全区間を徒歩で踏破しようとすると、写真撮影や休憩を含めておよそ4時間30分から5時間の所要時間を要します。普段から登山や長距離トレッキングに慣れていない人がいきなり全線を歩けば、後半は足腰の激痛と疲労によって景色を楽しむ余裕すら失われてしまいます。
そこで強く推奨したい十和田湖・奥入瀬渓流のモデルコースが、景観のハイライトが連続する「石ヶ戸(いしげど)」から「銚子大滝(ちょうしたいきの)」、そして「子ノ口」へと至る中・上流域を歩くプランです。手元に奥入瀬渓流の銚子大滝散策マップを広げてルートを確認すると、渓流美の象徴である「阿修羅の流れ」や「雲井の滝」、そして幅約20メートル・落差約7メートルを誇る本流最大の「銚子大滝」が、歩行距離約7.3kmの区間に凝縮されていることが分かります。この区間であれば、ゆっくり歩いても所要時間は約2時間30分から3時間程度に収まり、自然の迫力を余すことなく体感しつつ心地よい疲労感でゴールできます。
奥入瀬渓流の紅葉の見頃時期は、例年10月中旬から11月上旬にかけてピークを迎えます。ブナの黄葉とカエデの燃えるような赤、常緑樹の深い緑が織りなすグラデーションは圧巻の一言ですが、この時期は全国から観光客が集中します。見頃の絶景を安全に味わうためにも、全体の所要時間を無理に詰め込まず、要所を絞ったコース取りが極めて有効です。