へその緒をめぐっては、古くからまことしやかに語り継がれてきた数々の使い道の迷信が存在します。代表的なものが「子どもが大病を患った際、へその緒を煎じて飲ませると命が助かる」という民間療法です。また、「本人が亡くなった際に棺桶へ一緒に入れると極楽往生できる」といった地域伝承も存在します。
しかし、小児科医や産婦人科医の証言を待つまでもなく、乾燥したへその緒を煎じて飲む行為に医学的根拠は一切ありません。それどころか、長期保存によって雑菌が繁殖していた場合、体調を崩した乳幼児に投与することは衛生上極めて危険な行為です。近年注目される白血病治療などに使われる「さい帯血移植」は、出産直後に専門施設で無菌的に採取・凍結保存された血液細胞を指しており、家庭で保管するへその緒とは医学的に完全に別物です。
さらに深刻なのが、家庭内における桐箱のカビ放置問題です。「通気性の良い桐箱に入っているから大丈夫」と過信し、クローゼットやタンスの引き出しの奥に十数年間放置した結果、湿気や害虫の被害に遭う事例が後を絶ちません。ある整理収納アドバイザーは「実家の片付け現場で桐箱を開けると、へその緒が黒カビに覆われていたり、虫食いで粉末状になっていたりして、遺族がショックを受ける場面を何度も目にしてきた」と証言します。適切な防湿管理ができないのであれば、放置すること自体がモノに対する不敬になりかねないという皮肉な現実が存在します。