仕上がりの完成度の8割は、火にかける前の下処理で決まります。魚料理の専門家や和食職人が口を揃えて「ここだけは絶対に省略してはならない」と断言する工程が、塩振りとマグロカマ霜降り湯通しのコンビネーションです。
手順の第一段階は「振り塩」です。カマ全体に塩をやや多めに振り、バットに斜めに立てかけて約15〜20分放置します。浸透圧の作用によって、生臭みを含んだ余分な水分が表面に浮き出てきます。この水分をペーパータオルでしっかりと拭き取ることが、最初の防波堤となります。
続いて行うのが湯通しですが、ここに大きな盲点があります。沸騰したての100度の熱湯をいきなりカマにぶっかけると、表面の皮が破れて旨味が流出するだけでなく、細かいウロコや固まった血が身に焼き付いて取れなくなってしまいます。適正な温度は80〜90度前後(沸騰した湯に差し水を1割程度加えた状態)です。
大きめのボウルや深めのフライパンに湯を張り、カマを5〜10秒ほど潜らせます。表面が白く濁ったら、即座に氷水(または蛇口から流れる冷水)に落として急冷してください。この急激な温度変化により、表面のぬめりと余分な脂、血管の残留物が凝固します。
冷水の中で、指の腹や使い古した清潔な歯ブラシを使い、骨の継ぎ目や窪みにこびりついた赤黒い血合いの塊、残存するウロコを丁寧にかき出します。特にエラ蓋の裏側にある薄い黒膜は、加熱すると強烈な泥臭さを放つため、爪先で剥ぎ取るように除去するのがマグロのカマ下処理生臭さをゼロにする最大の秘訣です。