「カステラ一番、電話は二番」というフレーズを語る上で欠かせないのが、白黒テレビ時代から画面狭しと躍動してきたマリオネットのキャラクターたちです。「文明堂CM歴代キャラクター」の主役として知られる彼らの公式名称は「カンカンベア」。オッフェンバックの喜歌劇『天国と地獄』序曲(カンカン)の陽気なメロディに乗せて踊ることから名付けられました。
「文明堂コマーシャルソング詳細まとめ」によると、このテレビCMが関東圏で放送開始されたのは昭和37年(1962年)のことです。作詞は社内公募や創業家の意向を取り入れ、曲のアレンジとジングル制作は名作曲家・越部信義が担当しました。人形劇の本場である欧米の操り人形師、ノーマン・バーグ(Norman Berg)夫妻によって制作・操演されたマリオネットは、当時としては驚異的な滑らかさで動き、茶の間の目を釘付けにしました。
ここでネット上やファンの間で長年議論されてきた有名な謎があります。「文明堂CMカンカンベアはどう見てもネコに見えるが、本当にクマなのか?」という疑問です。実際、人形の後ろ姿を見ると、クマにはあり得ない細長い尻尾が左右に激しく揺れていることが確認できます。
この真偽について取材資料を照合すると、極めて人間味あふれる舞台裏が浮かび上がります。製作者であるノーマン・バーグ夫妻は当初、確かに「子グマ」として人形を造形していました。しかし、軽快なフレンチカンカンを踊らせる際、激しいターンやスカートの翻りに合わせて人形の動きをダイナミックに見せるため、装飾的なアクセントとしてあえて長めの尻尾を取り付けたのです。当時は海外アーティストとの国境を越えた共同制作であり、クマの生物学的なリアリティよりも、人形劇としての躍動美が優先されました。その結果、「ネコにも見える愛くるしい子グマ」という唯一無二のキャラクターが誕生し、現在も公式にクマとして愛され続けています。