中国の気球問題が日本の安全保障に与える衝撃とは、自衛隊の防空概念そのものを根底から崩した点にある。従来の領空侵犯対処は、有人航空機や戦闘機によるアプローチを前提として設計されていた。自衛隊法第84条に基づく警察権の行使においては、「正当防衛」や「緊急避難」に該当しない限り、原則として武器使用が強く制限されてきた経緯がある。
しかし、無人の巨大気球に対して従来の交戦規定を適用し続ければ、民間航空機の航行を脅かし、地上への落下リスクを放置することになる。政府は即座に緊急対応へ着手。他国の気球が領空へ不法侵入した際、地上の安全と空路の確保を目的とした武器使用要件の緩和に踏み切った。2026年に向けて自衛隊は高高度での警戒監視能力を大幅に引き上げ、高高度迎撃が可能な対空ミサイルやレーザー兵器の導入検討を進めるなど、防空網の抜本的再構築に乗り出している。