インフルエンザによる就業停止を巡る最大の混乱は、学校と一般企業のルールの混同から生じています。学校保健安全法では「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで」を出席停止期間と定めていますが、この法律は児童や生徒を対象としたものであり、民間企業の一般労働者にそのまま直結する法的な就業制限ではありません。厚生労働省が示す感染症の感染拡大防止ガイドラインでもこの学校基準がひとつの医学的目安として広く参照されているものの、一般企業において就業禁止を課す直接の根拠は、各社が策定する2026年最新感染症就業規則の条項に委ねられています。
ここで焦点となるのが、会社側から「出勤停止」を命じられた際の給与補償の有無です。企業が自社の就業規則に基づき、あるいは職場の判断として一律に従業員へ自宅待機を命令する場合、それは「使用者(会社)の責に帰すべき事由による休業」とみなされます。その結果、労働基準法第26条に規定された休業手当(平均賃金の60%以上)を支払う法的な義務が生じます。会社都合で休ませておきながら、賃金を完全に無給として処理することは違法です。
また、企業が求めるインフルエンザ診断書提出義務についてもトラブルが頻発しています。発熱外来が逼迫する医療現場では、確定診断書の発行に3,000円から5,000円前後の自費負担が発生し、受診そのものが患者の身体的負担となります。厚生労働省は過度な診断書要求を控えるよう医療機関および産業界に協力を求めており、調剤明細書や検査キットの判定写真、受診証明書で代用することを推奨しています。もし就業規則で一律に高額な診断書の提出を義務付けるのであれば、その費用は命じた会社側が負担するのが労務管理上の合理的な運用です。