長年親しまれてきた年金手帳は、なぜ終焉を迎えたのか。その発端は、平成30年(2018年)から本格化した日本年金機構におけるマイナンバー(個人番号)の利用開始である。
かつては就職や転職、結婚による改姓、年金請求のたびに手帳の原本を会社や役所の窓口へ物理的に提示する必要があった。しかし、住民票コードやマイナンバーによる行政機関同士の情報連携(公的個人認証)が確立されたことで、紙の冊子を発行し続ける行政コスト(年間数億円規模の印刷・郵送費)や、加入者の紛失リスクを背負い続ける必然性が消滅したのである。
法改正を経て令和4年(2022年)4月1日をもって年金手帳は完全に廃止され、以降は新規加入者に対して「基礎年金番号通知書」というシンプルな書面が交付される形へと一本化された。
ここで多くの人が疑問に抱くのが、「年金手帳の切り替えが必要ない理由」である。結論から言えば、手元にある青色・オレンジ色・茶色の手帳を破棄したり、通知書へ交換申請したりする必要はまったくない。
手帳に印字されている「基礎年金番号」そのものは生涯不変のパーソナル識別子であり、手帳という紙の器が廃止されただけで、記載されている法的効力は2026年の現在も完全に生きている。会社への就職時にも、手帳の表紙を開いて番号記載面をコピーして提出すれば、何ら支障なく手続きは完了する。