スマホの画面をタップすれば、数分で冷めた弁当が玄関前に届く時代だ。だからこそ、人はわざわざ足を運び、混雑した店内で相席になりながら湯気立つ白飯をかきこむ体験に餓えている。整えられたチェーン店の無機質な空間とは対極にある、あの独特の熱量だ。
カウンター越しに見えるのは、職人が巨大な鉄鍋で煮干しと昆布を煮出す立ちのぼる湯気。カツオを炙る炎の爆発音。ここでは、料理ができるまでの「待ち時間」すらもエンターテインメントへと変わる。合理化の波に呑まれた外食産業の中で、あえて手間にこだわり抜く姿勢が、若い世代にはむしろ新鮮な贅沢として映っている。