映画を観終えた後、観客の記憶に強く残り続けるのは時として主演俳優の決めゼリフではなく、画面の隅で不敵な笑みを浮かべていた一人の男の眼光だったりする。彼はセリフの量で勝負するタイプの俳優ではない。むしろ、言葉が途切れた「余白」の瞬間にこそ、その真価が発揮される。
画面のフレーム内に彼が立ち現れた瞬間、それまで漂っていたフィクション特有の軽やかさが一瞬で吹き飛び、生々しい現実感がスクリーンを支配する。登場人物が背負ってきた過去や、目に見えない生々しい生活の匂いを一挙に立ち昇らせる技術。それこそが、作品のリアリティを底上げする最大の武器となっている。