本作の脚本が見事な輝きを放っているのは、フィクションの秘密結社プロットを実際のキングスマン ファーストエージェント 歴史 背景に見事に織り込んでいる点です。1914年のサラエボ事件(フランツ・フェルディナント大公暗殺)から、アメリカの参戦を決定づけた「ツィンメルマン電報事件」まで、世界史の教科書に記された重要局面が影の組織の暗躍として再解釈されています。
なかでも圧倒的な異彩を放ち、観客の度肝を抜いたのが、ロシアの怪僧グリゴリー・ラスプーチン(リス・エヴァンス)との宮廷対決です。チャイコフスキーの「1812年序曲」に合わせてコサックダンスと武術を融合させたアクロバティックな殺陣を繰り広げるラスプーチンですが、実はこの描写には驚くべきキングスマン ファーストエージェント ラスプーチン 実話の怪奇性が反映されています。
史実におけるラスプーチン暗殺(1916年)は、シアン化カリウム(青酸カリ)入りの焼き菓子とワインを過剰に摂取させられたにもかかわらず平然としており、銃で撃たれ、激しい殴打を受けて凍結したネヴァ川に投げ込まれてもなお生存していたとされる異様な伝説が残されています。劇中で青酸カリ入りのケーキを平らげ、胃洗浄の催吐術をオーランドに強要し、氷の張った水中に沈められてようやく絶命する一連のシークエンスは、当時の猟奇的な歴史証言を映画的ケレン味として極限まで増幅させたマシュー・ヴォーンならではの歴史エンターテインメントと言えます。
さらに、英国王ジョージ5世、ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世、ロシア皇帝ニコライ2世の三国の君主を、名優トム・ホランダーが一人三役で演じ分けている点も歴史的な皮肉が効いています。彼ら3人はヴィクトリア女王の血を引く実の従兄弟同士であり、「第一次世界大戦とは、傲慢な親族同士の私闘に世界中の民衆が巻き込まれた悲劇であった」という辛辣な歴史批評がキャスティングの妙として機能しています。