駅から南へ歩くこと約10分。「北九州の台所」として百余年の歴史を紡ぐ旦過市場周辺には、本物の素材を愚直に扱う日本料理の名店が点在している。度重なる火災を乗り越え、力強く前を向くこのエリアには、食材への敬意と職人の気骨が今なお満ちている。
市場の魚屋から仕入れる朝獲れの刺身定食や、郷土料理「じんだ煮(ぬかみそ炊き)」をメインに据えた御膳は、舌の肥えた地元民の胃袋を掴んで離さない。青魚をぬか床でじっくり煮込んだぬか炊きは、特有のコクと爽やかな酸味が白米の甘みを極限まで引き立てる。華美な装飾を排し、食材の本質を突いた料理の数々は、わざわざ歩いて訪れる価値に満ちている。