中禅寺湖の全容を立体的に体感する上で外せないのが、東武興業が運航する機動力あるクルーズ船です。現在、中禅寺湖遊覧船の乗り場は中心拠点となる「船の駅中禅寺」を起点に、湖東側の「中禅寺温泉(華厳の滝至近)」エリアから、南岸の文化遺産を結ぶ形でネットワークが維持されています。定期航路の「名所廻りルート」を利用すれば、陸路ではアプローチが制限される名勝地を効率的に巡回することが可能です。
特に下船して歩く価値があるのが、南岸に佇むイギリス大使館別荘記念公園およびイタリア大使館別荘記念公園です。英国の外交官アーネスト・サトウが個人の山荘として建て、後に大使館別荘として利用されたこの建物では、広縁のカフェスペースから絵画のような湖水を眺めつつスコーンと紅茶を味わえます。杉皮張りの幾何学模様が美しいイタリア大使館別荘と合わせて散策することで、明治期の外交官たちがこの湖畔に「母国のスコットランドやイタリアの湖水地方」の面影を重ね合わせていた歴史的追体験ができます。
一方、日本三名瀑のひとつである華厳の滝へのアクセスは、中禅寺温泉バスターミナルから徒歩約5分という至近距離にあります。中禅寺湖の水が落差97メートルの断崖を一気に落下する景観は圧巻ですが、午前中の早い時間帯は滝壺付近に深い陰影が落ちるため、写真撮影を意識するなら太陽が高くなる正午前後の訪問がベストです。エレベーターで地下100メートルの観瀑台に降り立つと、爆音とともに飛沫が迫る自然の驚異を肌で実感できます。