インターネット上で絶えず高い関心を集めるテーマが、井手上漠の性別の真相です。公式プロフィールおよび公的記録における戸籍上の性別は男性ですが、本人が発信し続けているメッセージは「男か女か」という二者択一の議論そのものを無効化しています。メディアのインタビューや特番において幾度となく問われてきたアイデンティティについて、本人は一貫して「性別という枠組みに自分を当てはめる必要性を感じない」「漠は漠」と明言してきました。
思春期には、周囲の視線や身体的な発達に伴う違和感に深く苛まれた時期がありました。肩幅の変化や骨格の成長、そして声変わりといった第二次性徴は、自己表現を模索する若き日の心に少なからぬ影を落としました。しかし、そこで無理にどちらかの性に過剰適応するのではなく、自分自身が心地よいと感じるファッション、ヘアスタイル、メイクを徹底的に追求する道を選択しました。その結果生まれたのが、既存のジェンダー観を心地よく解体するジェンダーレスモデルとしての佇まいです。
かつて出版された自著であるフォトエッセイ『normal?』(講談社)の中では、「普通とは何か」という問いに対する激しい自問自答が生々しく綴られています。社会が規定する「普通」という物差しに自分を削って合わせるのではなく、自分というオリジナルを確立すること。この強固な自己定義こそが、若い世代のみならず幅広い層から熱烈な支持を集める最大の要因となっています。