事件の幕開けは、2007年8月下旬のインターネット上にありました。開設されていた非合法掲示板「闇の職業安定所」に、「何か組んでやりませんか」「金になる仕事がある」といった書き込みを通じて集まったのが、当時36歳の神田司、32歳の堀慶史、40歳の川岸健治の男3人でした。互いの本名すら知らず、ハンドルネームで呼び合っていた3人は、短期間のうちに強盗計画を練り上げます。
名古屋闇サイト殺人事件 経緯 タイムラインを検証すると、犯行の短絡性と冷酷さが際立ちます。2007年8月24日夜、名古屋市千種区の路上を歩いていた会社員・磯谷利恵さん(当時31歳)がターゲットにされ、3人によって無理やり軽乗用車へ押し込まれました。車内で手錠をかけられ、粘着テープで自由を奪われた利恵さんは、執拗にキャッシュカードの暗証番号を問い詰められます。
長久手町(現・長久手市)の駐車場に止められた車内で、犯人グループは利恵さんに対して凄惨な暴行を加えました。命乞いをする利恵さんに対し、男らは金品を奪った証拠隠滅のために殺害を決意。ハンマーやロープを用いて命を奪い、遺体を岐阜県瑞浪市の山林に遺棄しました。金銭目的で赤の他人の命を虫けらのように扱う残虐非道な凶行でした。
この極限状態において、利恵さんが見せた勇気は後世に語り継がれています。利恵さんは激しい脅迫を受けながらも、口座残高を守り犯人の思惑を挫くため、とっさに「2960(肉食え)」という偽の暗証番号を教えました。犯人らはATMで現金を引き出すことができず、犯行直後に内部分裂を起こす決定打となりました。恐怖に屈せず尊厳を保とうとした利恵さんの行動は、事件の全貌解明につながる重要な手がかりを残したのです。