本作の基本筋は、スーパーでパート勤務をしながら慎ましい生活を送るごく普通の主婦・浜岡妙子(若村麻由美)が、顔・声・背格好が瓜二つである大女優・若菜絹代(若村麻由美/一人二役)の失踪に伴い、莫大な報酬と引き換えに「身代わり」を引き受けるところから動き出します。若菜が起こした不倫・脱税疑惑スキャンダルの会見を乗り切るだけの短期間の契約だったはずが、芸能界特有の利権や嘘、思惑の渦に巻き込まれ、なりすまし生活は泥沼化していきます。
キャスト陣の盤石な演技力と配置の妙こそが、荒唐無稽とも思える設定に説得力を与えました。若菜の夫で元俳優・ヒモ気質の水田夏雄を演じた沢村一樹は、軽薄さと底知れぬ哀愁を巧みに表現。若菜が所属する「プロダクション曼珠沙華」の社長・比嘉莉湖役の木村佳乃は、事務所の存続と自身の良心の間で揺れ動く女性経営者の苦悩を気品高く演じ切りました。さらに、妙子の家庭側ではマキタスポーツ演じる無神経な夫・陽一、中川大輔演じる冷めた視線を持つ息子・あきらが配置され、「非日常の芸能界」と「息苦しい日常の家庭」という2つの相関図が見事なコントラストを形成しています。