仕上がりの柔らかさと食感を左右する第一関門が、調理前の下ごしらえです。どれほど茹で時間を厳密に計っても、下処理が不十分であれば生臭さが残り、噛み心地も損なわれます。確実なステップを踏むことが成功への近道です。
まず、胴の中に指を滑り込ませ、背側の軟骨と内臓(ワタ)がくっついている接合部を指先で優しく外します。足(ゲソ)をゆっくり引き抜くと、内臓が破れずに丸ごと取り出せます。胴に残った軟骨を引き抜き、流水で胴の内部を指の腹で洗って墨やぬめりを落としたら、水気をペーパータオルで完全に拭き取ります。
次に、食感に大きく影響するのがイカの皮の剥き方です。イカの胴には4層の皮があり、一番外側の赤褐色をした外皮だけでなく、その下にある透明な薄皮が加熱時に縮んで身を固く締め付ける原因になります。皮を剥く際は、乾いたキッチンペーパーでエンペラ側の端をつまみ、足側に向かって一気に引き剥がすのが現場の基本技術です。指先に粗塩を少しつけると滑り止めになり、途中で皮が千切れるストレスなく剥ぎ取れます。
さらに、身の内側に格子状の細かな隠し包丁(切れ目)を入れておくことで、加熱時の急激な反り返りを抑え、繊維が断ち切られて驚くほど柔らかい噛み切り感を実現できます。