島倉千代子の生涯を語る上で欠かせないのが、世間を震撼させた巨額の借金トラブルです。ネット上の一部では「本人の浪費癖や放蕩が原因ではないか」といった誤った噂が散見されますが、これは事実と全く異なります。彼女が背負った借金の真相は、身内や知人、ビジネス関係者に利用された連帯保証人被害でした。
当時、島倉の莫大な稼ぎと純粋な性格に群がった一部のマネージャーや興行関係者、知人たちが、彼女の名義を悪用して手形を乱発。島倉本人が知らぬ間に実印が使われ、あるいは「名前を貸してくれれば絶対に迷惑はかけない」と懇願されて保証人欄に署名してしまった結果、連鎖倒産によって彼女の肩にすべての債務がのしかかりました。
その負債総額は、利息を含めて当時の金額で16億円以上に達したと報じられています。普通の人間であれば自己破産を選択し、すべての責任から逃れるのが合理的な判断でした。しかし、島倉千代子は「私を信じてくれた人たちに迷惑はかけられない」と、自己破産を頑なに拒否。地方のキャバレー回りや過酷な全国巡業を自らに課し、汗と涙で1円ずつ返済を続けました。彼女は決して借金を作った加害者ではなく、信じる心を踏みにじられた被害者でありながら、道義的責任を一身に背負い続けた稀有な表現者だったのです。