陸軍の特攻部隊「万劫隊」の飛行士として出撃した佐々木友次伍長の足跡は、特攻の歴史における最大の衝撃作と言える。彼は上官から体当たり攻撃を命じられながらも、爆弾を敵艦に命中させて離脱し、自力で基地へ帰還するという行動を実に9回も繰り返した。
佐々木に死を要求し続けたのは、大日本帝国陸軍第6航空軍司令官の菅原道大中将ら上層部だった。一度出撃すれば「名誉の戦死」として発表される特攻において、生きて戻る存在は軍の宣伝工作にとって不都合極まりなかったのである。「なぜ生きて戻った」「次は必ず死んでこい」となじる上官に対し、佐々木は「爆弾を命中させて生きて戻り、何度も攻撃する方が敵に大きな打撃を与えられる」という信念を揺るがさなかった。
一死をもって完結させる特攻という異様な戦術に対し、佐々木友次が見せたのは「命を捨てずに成果を挙げる」というプロの飛行士としての誇りだった。彼の存在は、軍の理不尽な命令に対する極めて静かでありながら最も力強い抗戦の記録として、今なお語り継がれている。