新幹線網の拡充や観光需要の質的変化に伴い、わざわざ地方の名店へと足を運ぶ旅のスタイルは完全に定着した。とりわけ今年、飲食業界の最大の関心事となっているのが「本物志向の回帰」だ。加工された情報が溢れる時代だからこそ、偽りのない職人の技と鮮度がダイレクトに伝わる一皿に、人々はかつてない価値を見出している。
「半年前から予約を入れて、このためだけに飛行機を乗り継いできた」と語る30代の東京在住の男性は、目の前に出されたコハダの美しい握りを愛おしそうに見つめる。洗練された空間でありながら、どこか温かみのある接客。その絶妙な空気感が、遠方からの客の緊張を瞬時に解きほぐしていく。