櫻井焙茶研究所の革新性を理解する上で欠かせないのが、所長を務める櫻井真也の経歴です。同氏は、和食や和菓子の名店として知られる「HIGASHI-YAMA Tokyo」や「八雲茶寮」において長年マネージャーおよび茶務統括を務め、日本の茶文化とホスピタリティの最前線で研鑽を積んできました。
櫻井氏が過去のメディアインタビューや自著で一貫して語っているのは、「日本茶を格式高い儀礼から解放し、現代の嗜好品として再定義する」という強固な意志です。伝統的な茶道が重んじる形式美に敬意を払いつつも、それだけでは現代の生活様式から日本茶が疎遠になってしまうという危機感が、同氏の出発点でした。
独立後の2014年、櫻井焙茶研究所 表参道スパイラルに拠点を構えた背景には、現代アートや前衛的カルチャーの発信拠点であるスパイラルビルという立地を通じて、お茶の実験精神を可視化させる意図がありました。白衣を身にまとった茶人が真鍮やガラス、陶器の道具を操り、茶葉のポテンシャルを引き出す空間設計は、伝統と現代科学の交差点として国内外から極めて高い評価を獲得しています。