本作を語る上で絶対に切り離せないのが、2011年6月に日本武道館で開催された「AKB48 22ndシングル 選抜総選挙(第3回選抜総選挙)」の存在です。前年の第2回総選挙で大島優子にセンターを譲り渡した前田敦子が、13万9,892票という驚異的な得票数で王座を奪還。「私のことは嫌いでも、AKBのことは嫌いにならないでください」という、日本のエンタメ史に刻まれる魂の叫びを残した直後にリリースされたのが、この『フライングゲット』でした。
この歴史的背景を知ると、歌詞の端々に宿る「不屈の闘志」がより立体的に浮かび上がります。「誰よりも先に手に入れる」「他人の視線など恐れない」というフレーズは、アンチの誹謗中傷や凄まじいプレッシャーを受け止め続けながら、不動のセンターとして返り咲いた前田敦子の覚悟と完璧にシンクロしていました。秋元康が彼女の背中に宛てて書いたとも言えるリアリティが、楽曲に尋常ではない説得力を与えたのです。
そして、その火のような情念を加速させたのが、すみだしんやによる作曲です。すみだしんやは、哀愁を帯びたメロディと身体を揺さぶるリズムの構築に長けたヒットメーカーであり、本作ではブラスセクションと激しいディストーションギターが交錯するアッパーなラテン歌謡ロックを提示しました。生々しいドラムとパーカッション、煽情的なホーンの音色は、少女たちがアイドル界の頂点を争い、勝ち取った生命力そのものを表現していました。