全国的なTNR(捕獲・手術・元の場所に戻す)活動の浸透も、コミュニティの構造を根本から塗り替えた。ホルモンバランスの変化に伴い過度な攻撃性が抑えられたことで、血気盛んな若手によるクーデターは減少し、コミュニティ全体の長寿命化が進んでいる。
ここで興味深いのは、去勢手術を受けたかつての強者が、そのまま「名誉顧問」のような立ち位置で群れに残るケースが増えている点だ。直接的な生殖や縄張り防衛からは退きつつも、その圧倒的な存在感と経験値で、新参者の暴走を牽制する。若手が不必要な喧嘩を始めようとすると、一瞬の睨み合いだけでその場を沈静化させる。まさに年功序列と敬意によって成り立つ、成熟した社会構造がそこには存在する。