ネット上の掲示板や一部のゴシップ記事では、PESの脱退理由に関して「印税の配分を巡る金銭トラブル」や「ヒップホップ純度を巡る音楽性の不一致」といった説が根強く囁かれていました。しかし、公開された事実や関係者の証言を丹念に照合すると、これらは決定打ではありません。
確かにPESは、RIP SLYMEの楽曲においてサビのメロディラインやフックの多くを手掛け、ソングライターとしての比重が極めて高い存在でした。そのため著作権印税の分配や作業負荷の偏りに対する不満が副次的に存在した可能性は否定できません。しかし、彼が最も問題視していたのは金銭的な取り分ではなく、「クリエイターとしての尊厳」と「対等な人間関係の喪失」でした。
また、「PESがよりアコースティックやサーフミュージック寄りのソロ活動に専念したかったから脱退した」という言説も因果関係が逆です。グループ内での精神的な居場所を失い、自身のクリエイティビティを安全に発揮できる避難所としてソロ活動や別名義ユニットを模索したというのが実態に近いと言えます。ビジネス上の契約問題以上に、情動的な裏切りと孤立が最大の引き金でした。