リニューアル後の水木しげる記念館は、単なる原画の陳列にとどまらず、水木しげるという稀代の表現者が辿った激動の人生と、彼が生み出した妖怪たちの息遣いをシームレスに体感できる空間設計が最大の特徴です。公式発表資料や現地展示の構成を見ると、館内は「水木しげるの足跡を辿るプロローグ」から始まり、幼少期の「のんのんばあ」との出会い、苛烈を極めたラバウルでの戦争体験、過酷な極貧時代を経て国民的漫画家へと上り詰めるまでのドラマが、直筆の手記や貴重な一次資料とともに立体的に再構築されています。
特に来館者の足を止めさせているのが、最新の照明・音響設計を駆使した「妖怪洞窟」と「妖怪広場」の圧倒的な世界観です。闇の中に潜む妖怪たちの気配がリアルに再現されており、名作『ゲゲゲの鬼太郎』はもちろん、『悪魔くん』『河童の三平』などの象徴的なキャラクターたちが、民俗学的な背景の解説とともに目の前に立ち現れます。かつて水木氏が自著で語った「目に見えないものにこそ、大切なものが宿っている」という思想が、空間全体を通じて身体感覚として伝わってくる構成は圧巻の一言に尽きます。
また、2階の企画展示室および原画ギャラリーでは、繊細極まりない点描画の筆致や、生原稿に残る修正跡まで間近で観察可能です。印刷物やアニメの画面越しでは決して味わえない、肉筆が放つ生々しいエネルギーは、往年のファンのみならず現代の若いクリエイター層からも絶賛を集めています。