大衆的な知名度を決定づけたのは、NHK連続テレビ小説『花子とアン』での宮本龍一役だった。情熱的でありながらどこか哀愁を漂わせる佇まいは、朝の茶の間に強烈な爪痕を残した。しかし、彼の真価が真に世界規模で爆発したのは、濱口竜介監督の作品群との出会いだろう。
アカデミー賞国際長編映画賞に輝いた『ドライブ・マイ・カー』や、それに先立つ『偶然と想像』での演技は、映画関係者を唸らせた。台詞を喋る前のわずかな沈黙、視線の揺らぎ。演出家・濱口竜介が求める極限まで削ぎ落とされたリアリズムに対し、中島は圧倒的な純度で応えてみせた。これによって中島歩の名は、目の肥えた海外のシネフィルたちにも深く刻まれることとなった。