本作のバックボーンを語る上で欠かせないのが、日本映画界に金字塔を打ち立てた伊丹十三監督の名作『タンポポ』の存在だ。食を通じて人間の滑稽さや愛おしさを描き切った伝説的スタイルが、時代を超えて現代風のコメディドラマとして再構築される。
哀愁漂うスナックのカウンター。一杯の酒と温かい一皿が、訪れる客たちの疲れた心を解きほぐしていく。くすっと笑えて、最後には不覚にも涙がこぼれ落ちる。映画業界を長年牽引してきたスタッフ陣が結集し、細部にまでこだわり抜いた映像美は、まさに大人による大人のための極上のエンターテインメントと言えるだろう。