同校を語る上で欠かせないのが、文化・芸術の第一線で活躍する数多くの「出身芸能人・有名人」の存在です。なかでも中学・高校時代をこの地で過ごした星野源氏の足跡は、学校の教育環境を如実に象徴しています。
星野源氏は過去の自著(『そして生活はつづく』『働く男』など)やテレビのドキュメンタリー番組において、小中学校時代に深刻な対人不安やパニック症状、人間関係の軋轢に苦しんでいた過去を赤裸々に告白しています。そんな彼が自由の森学園に進学した際、最も救われたのが「他者と違うことを誰も笑わない、異常扱いしない空間」でした。演劇やギターに没頭し、後にインストゥルメンタルバンド「SAKEROCK」を結成することになる後輩の浜野謙太氏らと出会ったのも、この自由な校風の中でした。
しかし、星野氏は同時に手記の中で重要な真実を書き残しています。「自由であるということは、自分で何かしなければ何も起きないということだ」。強制される課題がない環境だからこそ、自らの意思で舞台に立ち、曲を書かなければ、ただ怠惰に時間が過ぎてしまう。その残酷なまでの「自由の対価」に気づいた生徒だけが、独自の表現力を磨き上げられるのです。
音楽ユニット「ハナレグミ」として知られる永積崇氏や、映画監督、陶芸家、木工作家など、同校の卒業生に手仕事やクリエイティブのプロフェッショナルが突出して多い理由はここにあります。誰かに指示された正解をなぞるのではなく、ゼロから自分の感性を形にするトレーニングを6年間かけて浴び続けるからです。
また、同校が創立以来担ってきた極めて重要な役割が、「公立学校で不登校を経験した生徒の積極的な受け入れ」です。学校特有の同調圧力やいじめによって心が疲弊した子どもたちに対し、同校は評価軸をリセットした「心理的安全性の高い居場所」を提供してきました。毎朝決まった時間に登校できなくても、まずは自分を取り戻すプロセスを教員陣が伴走する姿勢は、全国の不登校生徒を持つ保護者にとって大きな希望の光となってきました。