私たちが現在共有している「宮本武蔵と佐々木小次郎」のドラマチックな関係性は、昭和初期に朝日新聞で連載された吉川英治の小説『宮本武蔵』によって決定づけられました。宿命のライバルというドラマ性を高めるため、小次郎のキャラクターは若返り、清廉な美剣士として再構築されたのです。
決闘の舞台となった島は、正式名称を「船島」と呼びますが、小次郎の流派である「巌流」を称えて現在では「巌流島(山口県下関市)」の通称で広く知られています。島内には両雄が対峙する像が建立され、観光名所として整備されていますが、その静けさの中に眠る史実は、小説よりも遥かに泥臭く、命懸けのリアリズムに満ちていました。