魚料理の難敵は、水分管理と温度調整にある。皮目をパリッと香ばしく焼き上げ、身の水分を保持したジューシーな仕上がりに導くには、仕込みの段階で塩を振って臭みを含んだ水分を徹底的に拭き取ることが鉄則だ。小麦粉は焼く直前に薄く均一に叩きつける。この一工夫が、旨味を内側に閉じ込めつつ、余分な油の吸収を防ぐ強固なコーティングとなる。
焼きのプロセスでは、フライパンに少量のサラダ油を熱し、皮目から弱中火でじっくりと加熱を開始する。フライ返しで皮を数秒間軽く押し当て、フライパンと皮を密着させることが反り返りを防ぐ秘密だ。プロは焦らない。全体の7割程度まで熱が通るのを静かに待ち、仕上げにバターを投入してアロゼ(熱い油脂をスプーンですくって回しかける技法)を行うことで、極上の香ばしさと滑らかな口当たりが完成する。