1990年代以降のリメイク作品では、原作の持つミステリー構造の再解釈や、登場人物たちの内面描写の深化が進みました。
1996年の東宝映画版では、市川崑監督が『犬神家の一族』などの角川映画シリーズで見せた映像美学を再び投入しました。長身でスタイリッシュな豊川悦司が演じた金田一耕助は、知性とどこか冷徹な観察眼を併せ持ち、従来の泥臭い探偵像を鮮やかに刷新。また、浅野ゆう子演じる森美也子は都会的な洗練と妖艶さを強調し、物語の結末に向けたサスペンスを牽引しました。
そして2019年のNHKスーパープレミアム版では、吉岡秀隆が金田一耕助役を担当。吉岡版金田一は、事件の謎を解き明かすカタルシスよりも、悲劇を防げなかったことへの激しい後悔や、人間の業に対する深い悲哀を滲ませる演技で絶賛されました。辰弥役の村上虹郎が見せた危うい純粋さと、美也子役の真木よう子が醸し出す哀切な色香が絡み合い、単なるオカルトサスペンスを超えた「孤独な魂たちの悲劇」として高い評価を獲得しています。
また、物語を語る上で欠かせないのが田治見家の象徴である双子の老婆(小梅・小竹)の存在です。1977年版では毛利菊枝(小竹)と荒木道子(小梅)が演じ、その不気味な佇まいで観客を圧倒しました。1996年版では岸田今日子が、2019年版では倍賞美津子がそれぞれ一人二役で怪演し、旧家に巣食う因習と狂気を見事に表現しています。