ここで、ネット上で散見される誤解を是正しておかなければなりません。最も多い誤解は「丸福珈琲店は豆を焦がして苦くしているだけではないか」という極論です。しかし、珈琲豆の科学的知見に基づけば、単に豆を焦がしただけでは渋みとエグみ、不快な酸味しか残りません。丸福珈琲店の抽出液が苦味の中に豊かな甘味とコクを内包しているのは、豆の芯まで均一に熱を通す高度な焙煎技術と、雑味成分が抽出される直前で湯の流れをコントロールする職人のハンドドリップ技術が存在する証左です。
また、「珈琲には砂糖を入れずに飲むのが通である」という先入観も、丸福珈琲店においては当てはまりません。千日前本店の創業期から、丸福の珈琲は「角砂糖を1〜2個落とし、スプーンで混ぜずにそのまま飲む」ことで、上層の濃厚な苦味から底に溶け出す甘みへのグラデーションを楽しむスタイルが推奨されてきました。添えられている角砂糖は単なる甘味料ではなく、濃厚な珈琲の輪郭を際立たせるための重要な調味料なのです。