世間の関心が最高潮に達した記者会見で、猪瀬氏は「あくまで個人的な借り入れであり、資金はカバンに入れて運んだ」と主張した。そして、実際に使用したとされるバッグを持参し、報道陣の前で5000万円のダミー札束を入れようと試みた。しかし、結果は散々なものだった。ファスナーは閉まらず、カバンは無残に歪み、札束の山は溢れ出た。
なぜ資金はカバンに入らなかったのか。物理的な計算を行えば一目瞭然である。1000万円の束は厚さ約10センチ、重さ約1キロ。5000万円となれば、5束を並べても相応の容積と約5キロの重量になる。猪瀬氏が会見に持ち込んだ一般的なビジネスバッグの容量では、最初から物理的に収まるはずがなかったのだ。
舞台裏の独占証言や後年の検証によれば、当日の猪瀬氏は極度の混乱と焦燥の中にいたとされる。弁明のための「証拠」として急遽用意されたカバンは、実際に資金を運んだ際の物とはサイズが異なっていた可能性が高く、演出としてのパフォーマンスが完全に裏目に出た形となった。この物理的な矛盾が決定打となり、世論は「嘘に嘘を重ねている」という致命的な不信感を抱くことになった。