半月を指す情緒的な和名として古くから親しまれてきたのが「弓張り月(ゆみはりづき)」という言葉です。弓に張った弦(まっすぐな糸)と、湾曲した弓の木の部分になぞらえた表現ですが、ここに多くの人が陥る歴史的かつ科学的な罠が隠されています。多くの学習者が「空を見上げたとき、弦が上側にあるのが上弦の月ではないのか?」と誤解してしまうのです。
実際には、上弦の月が夕方に東南の空から昇ってくるとき、まっすぐな直線(弦)は斜め下や横を向いています。では、なぜ「上弦」と呼ばれるのでしょうか。その答えは、上弦の月 沈むときの形にあります。月は地球の自転によって東から西へと移動し、夜中の24時頃に西の地平線へと沈んでいきます。この沈みゆく瞬間、円弧の部分が先に沈み、まっすぐな「弦」が最後まで空に残り、水平に近い状態で上を向くのです。
古代の天文学者や暦法家たちは、西の山並みへと沈んでいく月の姿を基準として名付けを行いました。地平線に沈むときに弦が上を向くから「上弦」、逆に明け方に西へ沈むときに弦が下を向くから「下弦」という命名の起源を知れば、「空の高い位置にあるときの見た目」だけで弦を探そうとする混乱から完全に解放されます。