メダカの雌雄を肉眼で識別する際、生物学的に最も確実な根拠となるのが「背びれ」と「尻びれ(腹側後方のヒレ)」の形態差です。進化の過程で、オスとメスには繁殖行動を円滑に行うための特有の身体的適応が備わっています。
まず注目すべきは背びれです。オスの背びれには、付け根付近の後方に鋭い「切れ込み(スリット)」が存在します。軟条(ヒレを支える筋)の一部が欠けたように切れ込んでいるこの構造は、交尾時にメスの体を上からホールドするために発達したものです。対照的に、メスの背びれは切れ込みが一切なく、全体的に小さく丸みを帯びた形状を保っています。
続いて、最大の識別ポイントとなるのが「尻びれの形状比較(平行四辺形と台形)」です。オスの尻びれは前後の幅が広く、全体がほぼ均一な高さを保った「平行四辺形」を描きます。さらに成熟したオスは、ヒレの先端がギザギザとした鋸歯状(きょしじょう)になり、軟条の先端に微小な突起(交尾器の役割を果たす乳頭状突起)が発達します。一方、メスの尻びれは前部が幅広く、後方に向かって急激に狭まる「台形(あるいは三角形に近い形状)」をしており、ヒレ全体が小さくスッキリとした印象を与えます。
アクアリウム専門誌の調査やベテランブリーダーへの取材でも、「ヒレの形状さえ正確に捉えられれば、成魚の判別的中率は99%に達する」と証言されています。特に横見での観察時に、このヒレの幾何学的シルエットを見極めることが、雌雄識別の第一歩となります。