読者の心を強く揺さぶるのは、この美しい物語が決して創作のファンタジーではなく、1998年から実際に起きた動物行動の観察記録である点です。当時のニューヨーク・タイムズ紙などの現地報道や動物園の公式記録には、彼らの克明な生態が残されています。
セントラルパーク動物園のヒゲペンギン舎において、ロイとシロは互いに求愛の鳴き声を交わし、羽づくろいをし合う関係を自発的に築きました。彼らが石を温めようとする行動は、動物の本能に根ざした純粋な親和欲求の現れでした。飼育員が卵を託した際も、一般的なオスとメスのペアと何ら変わることなく、完璧な育児分担をこなしたことが記録されています。
ここで独自の情報として触れておくべきなのは、絵本では語られない「その後のリアルな結末」です。タンゴが独立した後の2004年秋、シロは別のメスペンギンである「スクラッピー」に関心を示し始め、ロイとのパートナーシップは自然と解消されることになりました。残されたロイは一時的に意気消沈したものの、翌シーズンには別の独身オスペンギンたちのグループに合流したと伝えられています。
この事実は「同性愛ペンギンの神話崩壊」とセンセーショナルに揶揄されることもありました。しかし、野生生物のペア形成における柔軟性や流動性を示す極めて自然な生態であり、彼らがタンゴを育て上げた数年間の献身と愛情の事実が揺らぐものではありません。